戦時作戦統制権の話

平時において、韓国軍の作戦統制権は韓国軍が持っています。しかし、戦時(非常時)においては韓国軍は在韓米軍(米韓連合司令部)の指揮下に入ることになっています。
これを「戦時作戦統制権(Wartime - OPCON: Wartime Operational Control)」と言いますが、ノ・ムヒョン政権時の2007年、韓国からの要請により、2012年に移譲することで米韓は合意していました。しかし、北朝鮮情勢の悪化を受けて延期され、2014年には「無期限延期」となりました。

こうして、しばらく忘れられていたのですが、ムン・ジェイン政権で取り上げられ、しかしコロナの影響で頓挫しました。

イ・ジェミョン政権においても公約に掲げています。また、米トランプ政権は在韓米軍縮小に積極的であり、戦時作戦統制権の返還を願う韓国と、ある意味で利害が一致しています。

戦時作戦統制権返還について、米国は2つの条件を提示しています。
ひとつは十分な軍事的能力を備えること...韓国が防衛産業PRに熱心なのは、戦時作戦権の返還に問題ないという演出も含まれているのでしょう。
二つめは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応する能力を備えることです。こちらはまだ達成できていません。
しかし、トランプさんは目的達成が全て。経緯はどうでも良いと考えているフシがありますから、在韓米軍縮小のためには韓国側の準備はどうでも良いとゴーサインを出す可能性は高いように思います。

 



マネートゥデイの記事からです。

ノ・ムヒョン時代に合意「戦時作戦権返還」、イ・ジェミョン大統領完成?...「時期尚早」3つの懸念


韓国が「戦時作戦統制権」(以下、戦作権)を米国から返還することについて、軍内外では「時期尚早」という評価が出ている。戦作権返還はイ・ジェミョン大統領の大統領選候補時代の公約であり、これまで政界でも進歩・保守政権を越えた国家的宿願と評価されてきたが、国防分野の高い対米依存度などを考慮すれば簡単には決めにくい問題だという指摘だ。

大統領室は11日、戦作権返還問題と関連し「過去から韓米間で論議されてきた懸案であり、新しい事案ではない」とし「新政府の公約事項でもある」と明らかにした。続けて「私たち側は米国側と同事案を継続して緊密に協議していく」とし、長期的懸案として推進すると話した。

(中略)

専門家らは、これを再び韓国軍に返還する場合、様々な問題があり得るという点を指摘する。第一に、同盟と伝統的な友邦も圧迫する米国ドナルド・トランプ2期で戦作権が韓国に再び来る場合、韓米連合作戦態勢が大きく弱化しかねないという憂慮だ。第二に、北韓の核・ミサイル脅威をリアルタイムで探知できる偵察衛星資産の高い米国依存度だ。第三に、全世界に韓国産兵器が輸出され、戦争に備えた砲弾備蓄量の不足など、いわゆる「K放散のパラドックス」問題だ。

チョン・インボム元合同参謀本部戦作権転換推進団長(予備役中将)はマネートゥデイ・ザ・300との通話で「戦作権を返還し、有事の際に権限を自ら行使しなければならないのは疑いの余地がない問題だ」としながらも「しかし、戦作権を我々が取り戻した場合、現体系の韓米連合作戦態勢が弱体化せざるを得ないのは明らかな事実だ」と強調した。

続けて「韓半島有事の際、米軍の増員、国連軍司令部の増員などが弱化することもありうる」とし「現在、米国トランプ2期行政府で戦作権を米軍が維持しなければならないと強調する人はジェイビア・ブランソン在韓米軍司令官(韓米連合司令官兼任)しかいないと言っても過言ではない」と話した。

チョン前団長は最近、韓米両国間の通商・安保「パッケージディール」(一括取引)過程で戦作権還収を交渉カードとして使わなければならないという一部の主張がつじつまが合わないと指摘した。トランプ2期がすでに韓国に迅速に戦作権を返還するという方針を立てただけに、交渉の議題にはなりえないという意味だ。

(中略)

現在、偵察用人工衛星資産の不足も戦作権転換が時期尚早だという評価に力を入れている。韓国軍が北韓の核施設などを監視・偵察する「宇宙の目」(人工衛星)が公式には4基に過ぎない。年内に1基が追加発射されても北韓の指揮部などを最大2時間間隔まで監視できる。このような監視の空白は現在、米国の偵察衛星が活用されている。

特に韓国軍が運用する偵察衛星は地球から約500km離れた地球低軌道衛星だ。一方、米軍は地球から約3万5000キロ離れた上空に静止軌道衛星を運用している。静止軌道衛星は地球の自転方向と人工衛星が回転する方向が同じで、事実上監視空白がないものと評価される。

キム・インホ元国防科学研究所(ADD)所長は「戦作権還収のためには韓半島を24時間ずっと見下ろす静止軌道衛星確保が重要だ」として「現在、韓国軍で運用する衛星は低軌道衛星で監視空白を米国資産に依存するほかはない」と話した。

(後略)



マネートゥデイ「노무현 때 합의 '전작권 환수', 이 대통령 완성?…"시기상조" 3가지 우려(ノ・ムヒョン時代に合意「戦時作戦権返還」、イ・ジェミョン大統領完成?...「時期尚早」3つの懸念)」より一部抜粋

建前上は戦時作戦統制権を返還して欲しい韓国ですが、現実問題として在韓米軍は「現状維持」のまま「戦時作戦統制権」だけ渡して欲しい、という感じですよね。

しかし、米側がそれを飲むとは思えません。なぜなら、それは戦時に在韓米軍が韓国軍の指揮下に入ることを意味するからです。米国がそれを受け入れるとは思えません。

ということは、戦時作戦統制権返還の流れの先には在韓米軍の縮小・撤収が控えているということで、日本も安全保障上、大きな影響を受けることになります。