「売れ!買わないぞ!」がギャクのよう、という話

日本製品の代替え品を登録・共有できるサイトでは、現在140件近いリストが出来上がっていますが、「完成品」にしか着目されていません。
当然のことながら、代替え品が存在しないものについては登録すらされていません。


お手軽なものしか登録しない

例えばJetStreamやHitec、SARASAなどのボールペンに対して国産ボールペンを代替えに設定しています。ですが、ペン先がどうなっているかまでは頓着していません。
ボールペンの先には極小のボールが付いています。そのボールを支えているのは、これまた極小の精巧バネで日本の企業が世界シェア50%を持っています。

リストに無いものとしてはオリンパス。ここは内視鏡シェア世界一(70%)です。
それとGaN系…かなりマニアックですが、GaN系LDというのはBlue-rayに使われているレーザーダイオード(LD)で、日本の寡占市場です。
GaN系LDの世界シェア95%を日亜化学が、GaN基盤は日本企業でトータル85%の世界シェアを持っています。
現状でBlue-rayドライブを搭載しているハードには、ほぼ日本産原材料が使われていると思って間違いありません。

「0.01%の日本産原材料まで見つけ出す」と息巻いている割には追及の手が甘いですね。


「売れ!買わないぞ!」の心理

日本のホワイト国*1除外に抗議する形で始まった今回の「日本製品不買運動」ですが、言っていることは 「(日本の素材を)売れ!じゃないと(日本製品を)買わないぞ!」 なんですよね…。
よくよく考えなくても言っていることが完全にギャクだと思うのですけれど…。


なんでこのような発想になるのか、少し考えてみたのですが、韓国社会における「供給側(サプライヤー)」と「需要側(顧客)」の関係によるものではないかと思います。

韓国の報道を見ていると 「갑질(カプチル;甲質)」 という言葉を目にすることがあります。
「甲によるの横暴」のことで、日本語で「パワハラ」に相当するものだと紹介されています。
主に会社の上司による部下への不当な扱いを指したりしてよく使いますね。ですが、韓国で「カプチル」という場合はもっと広い意味があります。

例えば、悪質クレーマーなども「カプチル」に分類されます。
コーヒーチェーン店で商品の提供が遅かった、という理由で店員に注文したコーヒーを投げつける…このような事例も「カプチル」として報道されていたりします。(日本でこれを「パワハラ」と呼ぶかと言われると、ちょっと違うでしょ?)


つまり韓国社会においては 「客」=「甲」 と見なされるのです。
供給側は買ってもらってはじめて商売として成立するのだから客の方が当然立場が上という前提が庶民の日常的な購買活動の中においても潜在的にあるのでしょう。

製品供給側である日本(乙)に対して、客(甲)である韓国が「甲の権利(おうぼう)」を働くのは当然となります。


日本において不買運動がムーヴメントとならないのは、この「需要側」と「供給側」を「甲乙」と考えるのが一般的ではないからだろうと思います。
もちろん日本でもゼロではありません。店側が販売企業に「値下げ」を要求するようなケースは沢山あります。
ですが、それが一般庶民の日常的な買い物の感覚にまで及んでいるか、と言われると、少し違うように思います。

うちの母が買うガムが、ある時期からL○TTEでは無くなっていました。
いつからかはハッキリしませんが、いつの間にか静かに勝手に変わっていました。
こうした強要も強制もパフォーマンスも負担も無い「サイレントでセルフな不買」がとても日本的だと感じる今日この頃です。


*1:名称を正式に「グループA〜D」とすることに決定。今まで「ホワイト国」と読んでいた地域を「グループA」とし、非ホワイト国を「グループB〜D」とする。