久しぶりにゴールデンレイ号の話

2019年9月に米ジョージア州の沿岸で転覆した現代グロービスの貨物船ゴールデンレイ号の撤去作業はハリケーンやコロナなど諸々で遅れていましたが、昨年11月6日に始まりました。

船体は海上で8つに切断された後、巨大クレーンで撤去されることになっており、当初の予定では一箇所の切断に1日(24時間)、撤去に1週間とされていました。
ところが撤去作業が始まって4ヶ月経った3月時点で予定の1/4しか撤去できていないそうです。
作業を注視している地元住民は「問題しか無い(Nothing but problems)」と嘆いています。


3月14日付のAP通信の記事によると、船体の切断にかかる時間は一箇所あたり1日とされ、撤去や次の切断の準備に掛かる時間を考慮すると、作業は8週間掛かるとされていたようです。
実際には最初の切断だけで3週間掛かり、2箇所目の解体には1週間、3箇所目は特に堅いエンジンルーム周りだったため難儀したようです。
2月いっぱい掛けて切断を試みるも、半分ほど切った辺り作業は中断されました。装置への過度な負荷が原因でメンテナンスが必要となったためです。

結局、4ヶ月掛けて撤去できたのは全体の1/4だけです。
原因は「予想より鋼鉄が硬かったため」だそうです。

作業再開は5月7日が予定されています。この地域は6月がハリケーン・シーズンですけど間に合うんでしょうか?

事故当初は周辺への環境汚染は確認されていませんでしたが、解体が始まってから付近の海岸にタイヤやバンパーなどの自動車部品が流れ着いたり油まみれの鳥が見つかるなどしているそうです。切断面からポロポロこぼれ落ちているんでしょうね。
切断作業が止まっている間は船内に取り残された車体を撤去する作業が行われているようですが、根本的な解決にはなっていないようです。

ところで、ゴールデンレイ号のサルベージ計画には一つ皮肉な話があります。
現在の指揮官は元々、船体を切断せずに「大きな塊」として撤去する方が早いと主張していたのだそうです。ところがサルベージ作業に当たっていた引き上げ業者は細かく切断してから撤去する計画を立て、指揮官側との意見の対立が起こりました。
指揮官は「時間が掛かり過ぎる」として業者を解雇。業者側は連邦裁判所に訴えましたが、判事は指揮官側に同意し申し立てを却下しました。

しかし結局、切断して撤去することになったわけです。
当初「切断」計画を訴えた業者はもう解雇されていません。それでこの様なのだとしたら随分お粗末です。プロや専門家の知見には謙虚に耳を傾けましょうね。