サムスンがスマホの発熱を押さえるために性能制限していた「GOS」システムが問題になっていることをお伝えしました。(詳しくはこちら)
これに関連して「GOSはサムスンのせいじゃない」とする主張がありました。問題は「半導体の設計だ」と。
GOSによる機能制限で訴訟が起こされているGalaxy S22にはサムスンが開発したExynos 2200、あるいはクアルコムのSnapdragon 898という2種のSoC*1が使われています。どちらが登載されているかは販売地域ごとに違います。(日本向けはSnapdragon)
ちなみに、Snapdragon 888および8 Gen 1はサムスンがクアルコムから委託を受けて製造しています。
しかし、歩留まりが35%と高く(100個中35個のみ出荷可能)、クアルコムは製造委託先を台湾のTSMCに変更することを、今年2月に発表しました。一部で「サムスンの技術優位性は終わった」と言われたりしているわけです。
じゃあ、原因はこのサムスン製造のSoCのせいなのか?というとそうも言い切れません。そもそも熱問題というのはずっと言われていたことです。
とはいえ、記事の主張(設計が悪い)は私には無理のある解釈に思えたのですが...どうでしょう?
アイニュース24の記事からです。
「GOS波紋」サムスンのせいじゃない?...ARM設計の問題「点火」
スマートフォン発熱論議で広がったAndroid陣営のアプリケーションプロセッサ(AP)問題が、サムスン電子のファウンダリではなくARMの設計のためだという分析が出た。サムスン電子機器だけでなく、大半のアンドロイドフォンで共通して性能問題が発生しているためだ。
12日、業界によるとサムスン電子の「Galaxy」シリーズをはじめ、Androidメーカーのフラグシップ製品には大半がクアルコムの「Snapdragon」がAPとして搭載された。またサムスン電子は自社生産プロセッサである「Exynos」も一部地域に採択して供給した。
昨年もサムスン電子は「クアルコム Snapdragon 888」と共に自社生産のプロセッサ「Exynos 2100」を「Galaxy S21」シリーズに地域別に区分して採択した。国内では「Exynos 2100」を搭載した。
しかし昨年からサムスン電子は発熱や性能低下を巡る議論に巻き込まれ、結局今年、国内で発売された「Galaxy S22」シリーズには「クアルコム Snapdragon 8Gen1」を搭載した。「Exynos」に対する国内世論を静めるためだ。
しかし問題は「Exynos」ではなく「ゲーム最適化サービス(GOS)」から発生した。「クアルコム Snapdragon8Gen1」が搭載されたにもかかわらず、発熱現象の兆しが見えサムスン電子がGOSプログラムでスマートフォンの性能を強制的に弱めたのだ。このため海外の主要IT部品評価機関ではGOS機能が搭載されたサムスン電子「Galaxy」シリーズを退出させた。
「クアルコム Snapdragon 8Gen1」が適用された中国の「Xiaomi 12Pro」と「モトローラエッジX30」も発熱と性能問題が明らかになったのは同じだ。特に中国ITメディアフェニックスニューメディアが「モトローラエッジX30」で行った性能テストの結果によると、3Dマークテストで最大58度を記録するほど発熱が激しかった。電力消耗率も高く、バッテリー消耗も早かった。
これに対して一部では、Androidフォン陣営のAP性能議論の原因が生産工程にあると主張した。サムスン電子ファウンダリが2020年の「Snapdragon 888」からクアルコムの生産工程を担当していたが、最近生産工程をめぐる議論が起きたためだ。
その後、クアルコムは新作APの「クアルコム Snapdragon 8Gen1+」の委託生産を再び台湾TSMCにすべて任せた。
(中略)
しかしTSMCの4nm工程で生産された新作APも前作で発生した発熱問題がそのまま発生したことが分かり、サムスン電子ファウンダリはこれまでかぶった「濡れ衣」を脱ぐことになった。発熱に対する責任の所在を、工程上の問題よりは根本的にチップ設計上の問題と見ることができるからだ。
(後略)
アイニュース24「'GOS 논란' 삼성 탓 아니다?..ARM 설계 문제 '점화'」より一部抜粋
焦点がズレている気がします。問題とされたのは「登載SoCではなくGOSだ」、「発熱はチップの設計のせいだ」に繋がります。
この二つ、別々に見るとどちらも問題なく思えるのですが、合わせ技で「発熱を抑えるためのGOS」を正当化しているように思えてなりません。
それがよく表れているのが「発熱に対する責任の所在を、(製造)工程上の問題より〜設計上の問題と見ること〜」の部分でしょう。
しかし、今回の「GOS問題」は性能とか設計とかの問題ではなく、あくまで「ユーザーに無断で」機能制限をおこなっていたことに対するものです。
しかも意図的にベンチマークアプリを機能制限対象から外し、性能優位性を示していました。そこにユーザー側が不信感を抱いたとして、何ら不思議ではありません。
似たような制限をiPhoneも行っていて、パフォーマンス管理機能というものが働きます。バッテリー温度、充電状態などを判断して意図的に機能制限することで突然のシャットダウンを防ぐものです。
バッテリーが劣化した状態で使っていると分かりますけど、かなーりもっさりしててテキスト入力でもワンテンポ遅れます。
ただし、Appleはこれらの機能があることを公式HPで周知しています。ここが今回のサムスンとの違いでしょう。