ファウンドリとしてのTSMCとサムスンの市場シェアはそれぞれ57.9%と12.4%でTSMCの圧勝です。
ただし、集計の仕方(メモリ半導体も含めた売上ベース)によってサムスンは「半導体売上世界1位」を喧伝してきました。
恐らく、こうしたことがある種の「錯視」効果となってサムスンがTSMCを「猛追」しているような印象を持つ人も多いのではないでしょうか?
しかし現実はサムスンはむしろ「猛追」され「追い越された」側です。Intelに、です。
Intelは売上ベースで2021年にサムスンに抜かれましたが、昨年2023年にサムスンを抜き返して再び1位になりました。さらにファウンドリ事業でも今年第1四半期にサムスンを抜き世界2位となる見通しです。
韓国経済の記事からです。
「サムスン電子は2位でもなく3位」...米半導体チャンピオンの挑戦
ここ数年、ファウンドリ(半導体受託生産)市場の競争構図は台湾のTSMCが1位、サムスン電子が2位だった。1位との格差(約40ポイント)は大きかったが、サムスン電子は「TSMCの代案」と評価された。
今後、状況が少し変わるものとみられる。米国を代表する半導体企業インテルは最近、事業部門を半導体設計・開発を担当する「インテルプロダクトグループ」と、チップ生産を担当する「インテルファウンドリグループ」の二つに分けることにした。これまでのインテルの中核事業が中央処理装置(CPU)の開発・生産・販売だったとすれば今後は「ファウンドリ」になると宣言したのだ。
(中略)
インテルとCPU・グラフィックス処理装置(GPU)市場で競争するAMD、NVIDIAなどはファブレスだ。チップ生産のためにはファウンドリに預けなければならない。これまでは主にTSMCを使用した。
インテルを利用するのは容易ではない。機密流出の憂慮のためだ。実際、アップルもライバル会社であるサムスン電子のファウンドリを全く活用しない。
インテルがファウンドリの独立性を強調するのはこのような疑いを減らそうとする目的だ。
(中略)
実績を別途集計すれば、ファウンドリ順位も上がる。インテルはCPU、GPUを設計するプロダクトグループが任せた生産物量もファウンドリグループの実績に入れることにした。自社の中央処理装置(CPU)事業部などが任せた生産物量もファウンドリ実績に入れることにした。こうすれば現在1%のインテルのファウンドリ市場シェアは10%台半ばに跳ね上がり、サムスンを抑えTSMCに次いで業界2位になる。インテル関係者は「第1四半期の2位が確実視される」と強調した。
(中略)
インテルはもともとIFS2024で「今年第1四半期から2位になる」という事実を喧伝しようとした。しかし実際には「2030年から2位になるだろう」と強調した。インテル関係者はこれに対して「2030年に2位というのは完全に『外部顧客売上』だけで2位になるという目標提示」とし「内部売上げを合わせれば第1四半期から2位」と説明した。
ライバルとしてサムスンに言及しない姿も見せた。TSMCに対して「立派な競争相手であり同業者」と評価したのとは対照的だ。
(中略)
インテルはファウンドリ工程の開発にも拍車を掛けている。インテルは今年、2nmと1.8nm工程を開始する。TSMC、サムスンの2nm導入時期は2025年だ。
(中略)
国内半導体企業関係者は「インテルはCPU世界1位の座を数十年守りながら『甲』の位置に慣れた企業」とし「顧客対象サービスが重要なファウンドリに適応するのが容易ではないだろう」と分析した。
(中略)
ファウンドリのライバル会社であるサムスン電子の存在もインテルの負担だ。サムスン電子はここ1~2年の間、収率問題で苦戦しているが2017年の事業部独立以後に積み上げてきたノウハウが侮れないという評価も出ている。
(中略)
サムスン電子の弱点とされていた超微細工程の歩留まり(生産品で良品の割合)も改善中だという。主力の4nm工程の歩留まりは60~70%まで上がった。これを基盤に生産したスマートフォン用プロセッサー「エクシノス2400」の性能に対しては肯定的な評価が出ている。
(中略)
反論も出ている。最近、インテルが工程開発に成果を出しているからだ。顧客会社サービスと関連しても「改善されている」という評価が出ている。インテルのファウンドリ顧客会社であるシーメンス、メディアテックの高位関係者らは、IFS2024に直接出向きインテルとの協業成果を公開した。
何よりも米国政府の支援がインテルファウンドリーの確実な成長動力に挙げられる。ジーナ・ラモンド米商務長官はIFS2024のビデオ祝辞を通じて「インテルは米国のチャンピオン」とし「シリコン(半導体)をシリコンバレーに返さなければならない」と話した。事実上、米国半導体企業に対する全面的な支援を約束したという評価が出ている。
韓国経済「"삼성전자는 2등도 아니고 3등"…美 반도체 챔피언의 도발 [황정수의 반도체 이슈 짚어보기](「サムスン電子は2位でもなく3位」...米半導体チャンピオンの挑戦)」より一部抜粋
ちなみにサムスンも同じように2017年にファウンドリ事業を独立させ内部売上げを実績として計上し2位になっています。同じ条件ならインテルは抜かれて無かったってことですね。
記事の後半部分、あーだこーだ並べ立てていますが、なんかこの辺は分析でもなんでもないいつも通りの「希望的観測」のコーナーです。(そして最後は「政府の全面的な支援が羨ましいっ」と読める)
「歩留まりで苦戦しているがサムスンにはノウハウがある(キリッ」とか、解消できてないなら一体何の意味があるというのか…。
こういう論調の記事を見ると、あるネット・ジョークを思い出します。日本人「できません」、韓国人「できます」、中国人「できました」...「アジアのビジネスではどれも信じてはいけない」ってヤツ。
条件を提示されたとき、本当はできるけど「できません」と答えるのが日本人、できないけど「できます」と答えるのが韓国人、できてないしできもしないけど「できました」と答えるのが中国人、というヤツ。
記事の「歩留まりで苦戦しているがノウハウがある(キリッ」はまさに韓国人の「できないけど『できます』」って言う状態ですよね。