韓国政府が派遣した「福島視察団」が視察を終えました。報告書は6月に出されるそうです。IAEAの最終報告書とタイミングを合わせるんだろうと思います。
で、報告書に先立つ形で大統領室長が「IAEAを信じられないと言っているが、そうなれば世の中に信じられるところがない」と、IAEAの報告書を全面的に尊重する発言をしました。
聯合ニュースの記事からです。
キム・デギ「IAEAが汚染水の安全性を担保できなければ我々も譲歩できない」（総合2報）
大統領室は24日、国会運営委員会で日本の福島原発汚染水放流問題と関連し、6月末に発表される国際原子力機関（IAEA）の分析と韓国視察団の調査結果を見て判断するという立場を明らかにした。
（中略）
同日の運営委にはキム・デギ秘書室長とチョ・テヨン国家安保室長をはじめ、大統領室秘書官級以上の参謀陣が出席した。
（中略）
キム室長は「IAEAで汚染水に対する総合結果が6月末に出る」として「IAEAで汚染水の安全性を担保できなければ私たちも当然譲歩できない」と答えた。
キム室長はただ「前政権のチョン・ウィヨン外交部長官もIAEA基準に従って事前協議し、放流に反対しないという立場だった」と伝えた。
キム室長はまた「4～5年後に（汚染水が）戻ってきたら大変なことになるというが、福島原発が爆発し、汚染水よりも多くのものが出た」とし「10年以上経ったが、韓国の海岸や水産物もどこを見ても問題ない、以前の福島と同じ結果だ」と述べた。
それと共に「私たちの近海90ヶ所余りを継続調査しているが、今まで問題がなかった」と強調した。
IAEAの調査結果を尊重するという立場も再確認した。
IAEAの信頼性を問題視する野党議員には「IAEAを信じられないと言っているが、そうなれば世の中に信じられるところがない」と指摘した。
キム室長は「政府がIAEAから試料を提供され分析中であり、分析結果が少し後に出るだろう」とし、民間専門家たちが調査結果を確認する機会を用意するという方針も明らかにした。
キム室長は「IAEAが大丈夫だと言えばそのまま賛成するという立場なのか」という質問に「そうだ。科学的に検証されたものだ」と答えた。
ただ「汚染水の放流を始めれば、日本の水産物輸入も再開するのか」という質問には「それは別問題」と線を引いた。
イ・グァンソプ国政企画首席は同日、汚染水に含まれた三重水素（トリチウム）が放射性元素であるセシウム137より人体に有害だという主張に対して「偽ニュース」とし、「三重水素は人体に入れば1週間から10日で排出される」と言及した。
大統領室は専門家視察団に原子力、放射能、環境分野の専門家が6人で、海洋環境専門家1人という事実も公開した。
（後略）
聯合ニュース「김대기 "IAEA가 오염수 안전성 담보 못하면 우리도 양보 못해"(종합2보)（キム・テギ「IAEAが汚染水の安全性を担保できなければ我々も譲歩できない」（総合2報））」より一部抜粋
それでも福島県産水産物の輸入は「別問題」としている所が意味不明ですけどね。
IAEAの評価が問題無いことも、三重水素の人体への影響が科学的に問題ないこともどうせ韓国だって分かっているのですから、IAEAの報告書が出る前に予防線を張りにきたんだろうと思います。
とは言え、この程度ですっかり煽られた韓国世論が納得するとは思えません。
先だってオックスフォード大学の名誉教授が福島処理水を「1リットル飲める」と発言したことに対して、次のような記事が出ました。
［ウェイド・アリソン／オックスフォード大学名誉教授（19日）：私は1リットルの処理水を飲める、安全だと申し上げましたが、魚がこのような水を飲んでも同じですし、魚を食べる人も無害でしょう。 （他の問題が多い状況で）三重水素が全く問題にならないと思います］
ここで注目すべき単語は、この「三重水素」です。
ALPSで浄化過程を経たとしても、この三重水素をはじめとする一部の放射能物質をろ過することは難しいからです。
日本政府が国際機関の基準より低い濃度に希釈するという立場ですから、飲んでもいいというのがこのイギリス教授の説明でした。
しかし、長期的に人体にどのような影響を与えるのか議論が起きました。
これに対して国策機関の韓国原子力研究院長が立場を示しました。
福島の汚染水に含まれる三重水素濃度は、飲める水、つまり飲用水基準をはるかに超えているということです。
結論は飲んではいけないということです。
［チュ・ハンギュ／原子力研究院長］「汚染水に三重水素濃度が平均62万ベクレルです。リットル当たり。ところで飲用水基準が1万です。だから62倍になるでの飲用をしたら、常時飲用をしてはいけません］
YTN「"오염수 1L 마셔도" 발언에...우리 국책기관 입장은? [앵커리포트]」より一部抜粋
（検査キットが欲しいなら日本人でごめんなさいと謝れ、の）YTNは「結論は飲んではいけないということです」を強調し、「国民の健康と直結した問題」と不安を煽っています。
「注目すべき単語」が「三重水素」なら「三重水素が生物の体内に蓄積する等、影響を与える科学的根拠は無い」にまず注目すべきでしょうに。
飲料水として利用できる水の基準は水道水質基準として定められています。処理水はこの基準を満たしていません。だから結論だけ言うなら「飲んではダメ」です。当たり前です。
でもそれは、水質検査を受けていない井戸水やドラム缶に貯めてある雨水を飲料水として利用できないのと同じレベルのことです。「基準外」なんですから。これが分からない人とは何を話しても分かり合えないのかなぁ、という気がします。
