中国、長期成長率と関連する全要素生産性の急速な低下...韓国の中国依存度低下は避けられないという話

韓国の輸出不振は中国経済が回復すれば回復する、という意見が主流です。しかし、最近発表された中国の5月小売売上高(13.6%)と鉱工業生産(3.6%)はかなり微妙な数字でした。
前年同月比は12.7%と3.5%です。これだけ見ると凄い数字ですが、予測値はそれぞれ18.4%5.6%で、全然届いていません。

前年同月比が高いのは去年の数字が悪すぎたためです。中国は去年の3~5月に上海など一部で都市封鎖を行い、それに伴う物流・生産の停滞がありました。青年失業率は一時19.3%にまでなりました。
しかしリオープニング後に、思ったほどの回復力を見せていないということが指標から伺えるわけです。(しかも「中国」の発表ですからね。数字が盛られて「コレ」です)

そんなこんなで「アレ?このままだと韓国経済ヤバくない?」な声が徐々に大きくなっている気がします。

 



ヘラルド経済の記事からです。

「チリ・トルコより生産性の低い国...韓国『中国依存度』の縮小は避けられない」


(前略)

韓国経済研究院(以下、韓経研)は16日、「中国の政治・経済リスクと韓国経済に対する示唆点」と題した報告書を通じて、中国の根本的なリスクは生産性低下だ、と評価した。特に長期成長率と直結する全要素生産性(Total Factor Productivity)の下落傾向が非常に急だと指摘した。全要素生産性は労働、資本など直接投入要素を除いた技術開発、革新力量、制度の効率性など見えない要因が創り出す生産性を意味する。ある社会の経済的効率性を代表する。

所得水準が高くなるほど全要素生産性増加率は下落する傾向がある。しかし、中国の2015~2019年の全要素生産性増加率は似たような所得水準の国家だけでなく、所得水準が高いOECD国家と比べても非常に低いことが分かった。PWT(Penn World Table)データベースを使用して複数の国の全要素生産性増加率と一人当たり所得との関係を比較分析した結果、中国の全要素生産性増加率(2015~2019年平均)は、同期間のOECD国家平均より1.8%ポイント低かった。

また報告書は中国の労働生産性増加率の傾向的下落も明確だとし、これは労働生産性増加率の変動性が高い多数の国家と対比されると分析した。

イ・テギュ先任研究委員は「輸入は貿易収支の側面ではマイナス効果があるが、輸入品が国内産業に及ぼす知識波及効果は全要素生産性を増加させる効果を持つ」とし「1980年からの統計を使って分析した結果、中国の場合、平均的に輸入比重が1%減少すれば全要素生産性増加率は約0.3%ポイント減少する可能性がある」と推定した。

(中略)

中国の友好国(ロシア、イラン、北韓、一部中央アジア諸国)と米国の友好国(西側先進国、韓国、日本など)が提供するサプライチェーンの質的水準の差が非常に大きいという点も指摘された。

(中略)

イ先任研究委員は「米・中葛藤で強制される側面を除いても中国の生産性低下にともなう長期成長率下落により韓国経済の中国比重縮小は避けられない状況になるだろう」と主張した。

(後略)



ヘラルド経済「“칠레·터키보다 생산성 낮은 나라…한국, ‘중국 의존도’ 축소 불가피”(「チリ・トルコより生産性の低い国...韓国『中国依存度』の縮小は避けられない」)」より一部抜粋

誤解を招くタイトルにしてあるのは多分、わざとでしょう。「韓国」が「チリやトルコ」より「生産氏の低い国」のように伝わるかもしれませんが、違います。これは「中国」のことです。(しかし、チリやトルコを引き合いに出す必要が果たしてあったのでしょうか?ナチュラルにこれらの国を「下」に見ているような気がして、あんまり気分の良いものではありません)


全要素生産性とは、技術革新による生産効率の向上、規制緩和、業務効率化、ブランド価値などの付加価値が含まれます。
輸入が減ると全要素生産性が低下するのかは、ちょっと分からないのですが(生産効率が落ちるから?)、記事の言うところによると、「米中葛藤が無かったとしても中国の成長率は長期的に下落するため、韓国経済の脱中国偏重は避けられない」とのことです。

それで具体的にどうするのかという点は、「供給網安定化基本法」を早急に処理する必要がある、としています。これは日本の「経済安全保障促進法」のことです。これに相当する法案を準備するべきと指摘しています。
記事からこの部分は省略して訳しましたけれど、特にコレと言って具体案を提示せず「〇〇しなければならない」、「〇〇するしかない」的な記事や報告書が多い中では割とまともな提言のように感じます。