研究開発費14.6%削減したユン政権、一転「任期中に研究開発予算を大幅に拡大」「革新的・挑戦的な研究開発は全面的に支援」と支離滅裂な話

2024年度、韓国は研究開発(R&D)予算を前年比14.6%、額にして4兆6000億ウォン(約5066億円)削減しました。33年ぶりの削減です。

ユン政権は健全財政化を目標に掲げていますから、無い袖は振れない、とばかりに削減を決めたようですが、色々と問題も多い決定だったようです。

 



ハンギョレの記事からです。

ユン大統領の一言で不意打ち...科学界「チョンゴンの講義を見なければならないというが」


2024年、大韓民国の国家研究開発(R&D)予算は26兆5千億ウォンだ。前年(31兆1千億ウォン)より4兆6千億ウォン減少した。

(中略)

1991年以来33年ぶりの研究開発予算削減だ。通貨危機の時も無かったことだ。

不安な兆候はユン・ソンニョル大統領の口から始まった。就任以後、健全財政を粘り強く強調してきたユン大統領は昨年6月28日、国家財政戦略会議で「分配式、分割式の研究開発費はゼロベースで再検討する必要がある」と述べた。2024年度の各部署の予算案を企画財政部に出さなければならない期限(6月30日)を目前に控えた時点だった。ユン大統領は続いて昨年7月3日、新任次官任命式の後、「韓国政府は反カルテル政府だ。利権カルテルと容赦なく戦ってほしい」と新任次官らに呼び掛けた。

(中略)

ユン大統領がカルテルという用語を公式に使い始めたのは、2021年6月29日の大統領選出馬記者会見の時だった。彼は「政権交代ができなければ腐敗した利権カルテルが今よりさらに幅を利かせる国になり、国民が長い間苦しむだろう」と話した。

2022年11月30日、ユン大統領と科学技術界の元老との昼食会では「分配」という用語が登場する。昼食後、大統領室は「出席者たちは研究開発課題配分の際、選択と集中をするよりは『分配』方式で進められる場合がある」と指摘した。これに対しユン大統領は科学技術情報通信部長官に改善策作りを要請した」とブリーフィングした。

(中略)

一体どのような根拠で予算まで削るのか、という科学技術開の反発が強まると、チョ・ソンギョン科学技術情報通信部1次官(前大統領秘書室科学技術秘書官)は先月12日、デジョンユジョン区韓国電子通信研究院(ETRI)で開かれた「74回大徳イノポリスフォーラム」に参加し「科学界カルテル」の具体的な事例8つを列挙した。

(中略)

これに対して科学技術開は「個人の逸脱、あるいは個別不正事件であってカルテルとは見難い」と反発した。

(中略)

研究開発予算削減と関連して現場の声がまともに反映されなかったという批判も大きい。ムン・ソンモ出捐科学技術人協議会総連合会(研総)会長は「民主主義社会では多様な意見を聴取した後、それを土台に政策を作らなければならない。予算案を作るときも研究者たちと先に疎通した後、削減したとすれば、このように反発が大きくはなかっただろう」とし「政府次元で予算案削減を定めた後、トップダウン方式で降りて来るので研究現場に大きな混乱があるほかなかった」と話した。イ・オファク責任研究員も「ユン大統領が科学界を非効率集団と見ているためカルテルと罵倒しているようだ。だが、科学技術情報通信部が半年近く現場と協議して作った予算案を一言で覆すのがより大きな非効率」と話した。

5日、ユン大統領はソウル城北区の韓国科学技術研究院で開かれた「2024年科学技術人・情報放送通信人新年挨拶会」で「任期中に研究開発予算を大幅に拡大し、革新的・挑戦的な研究開発にはお金がいくらかかっても全面的に支援する」と話した。また「予算問題は政府に任せて皆さんは世界最高に向かって思う存分挑戦して欲しい」とも話した。先日、研究開発予算を大幅に削減しておいて「任期中に大幅拡大」するという、辻褄が合わない発言だった。

(中略)

ある研究員が冷笑的に話した。「科学技術現場をよく知らずに研究開発予算を削減した大統領が何を分かってそうしたと思いますか?このように突拍子もない政策が出る時は、チョンゴンの講義を受けなければならないと言いますね。冗談か本気か···」

昨年10月12日、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会の中小ベンチャー企業部の国政監査で、ユン大統領夫妻と親交があると知られた占い師のチョンゴンが取り上げられた。共に民主党のキム・ソンファン議員はこの日、チョンゴンが同年1月「韓国には科学者が必要ない。 外国で発表した科学論文を見るだけ」と話したユーチューブの動画を流した。キム議員は「研究開発予算削減の背景について『我が国に科学者は必要ない』と主張したチョンゴンが介入したのではないかという話がオンラインに広がっている」として「大統領と政府が研究開発削減の意思決定過程を明確に明らかにしないので、このような噂が流れている」と話した。

(後略)



ハンギョレ「윤 대통령 한마디에 날벼락…과학계 “천공 강의 봐야 한다던데”(ユン大統領の一言で不意打ち...科学界「チョンゴンの講義を見なければならないというが」)」より一部抜粋

「チョンゴン」さんというのは、本名は「イ・ピョンチョル」といったらしいのですが「イ・チョンゴン」に改名しています。Youtuberの歴史家・宗教家だそうです。
宗教家といっても、キリスト教とか仏教とかではなく、土着のシャーマニズムっぽいもののようです。(宗教家というより占い師に近い?)
歴史や宗教関連の話だけでなく、時事ネタを広く浅く動画にしているそうで、よく言えば世相に敏感、悪く言えば何にでも首を突っ込むタイプ。

ユンさんとの付き合いがどの程度かは知りませんが、野党やハンギョレの今回の記事でチョンゴンさんを引き合いに出すのは「民間人(占い師)による国政壟断(チェ・スンシル・ゲート)」と結びつける意図がプンプンします。


それはともかくとして、門外漢が出て行ってトップダウン形式に指示することが管理・監督だと思っている人がたまに(?)居ますよね。
下から上がってくる予算案には「無駄がある」ことを前提に厳しく精査することが管理・監督だと思っているケース。
是非はともかくとして、かつて民主党が行った「事業仕分け」がまさにそれだと私は思っているのですけれど(「2番じゃダメなんでしょうか?」との迷言を生み出したアレ)、ある程度は丸投げで専門家の差配に任せることも上の役目だと思うんですけどね。

この予算削減の影響で、韓国の国産mRNAコロナワクチン研究開発事業が事実上、中断されたそうです。
「新・変種感染症対応プラットフォーム中核技術開発事業」の予算が当初計画から80%カットの27億ウォン(約2億9800万円)に引き下げられたためです。
チームの試算によると、非臨床試験のために20億ウォン(約2億2000万円)、人件費として7億5000万ウォン(約8300万円)が必要とのことで、研究費に回せる分がなく、「研究は事実上中断せざるを得ない」とのこと。