慰安婦記事の元朝日新聞記者の上告が棄却された話

元朝日新聞の記者で最初に元慰安婦の証言を報じた植村隆さんがジャーナリストの櫻井よし子さんと出版社を相手に名誉毀損を訴えた裁判の上告が退けられました。一・二審確定で敗訴になります。

勘違いしてはいけないのは、上告が退けられたからといって、彼の書いた記事を裁判所が「捏造」と認めたわけではないということです。
争点はあくまで櫻井さんがそれについて書いた(「捏造」「意図的な虚偽報道」)内容であって、植村さんの過去の記事ではありません。


裁判所は名誉毀損については社会的評価を低下させたとして認定しています。
ですが、櫻井さんが書いた内容に事実(植村さんの書いた記事は捏造)と判断できるだけの理由があり、またその内容が公益性に適うという判断です。


植村さんが書いた問題の記事は1991年8月11日付の「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口を開く」という題のもので、有名な金学順(キム・ハクスン)さんの証言を報じたものです。

この中に「女子挺身隊の名で戦場に連行された」という内容が出てきます。これが捏造/誤報とされています。
なぜなら彼女は、その4日後に出たハンギョレ新聞の記事では自身は「親に売り飛ばされた」と言っているからです。

この時点で既に証言が食い違っています。
どこで曲がったのかは分かりません。もしかしたら金学順は最初から「親に売り飛ばされた」と言っていたのに誤訳したのかもしれません。もしかしたら彼女は相手によって話を変えていたのかもしれません。この辺りは分かりませんし、解明のしようもありません。


問題はこの記事が後に与えた影響です。
慰安婦問題がこれほど拗れてしまった背景には、この記事が大きく影響していることは確かです。
きちんと語ろうと思えば、マイルドに言って「誤報」、厳しく言うと「捏造」という評価がどうしても付いてしまいます。