昨晩、韓国で非常戒厳令が発令されました。突然過ぎてビックリしたのですけれど、一応、発令から6時間で正式解除されました。
韓国で戒厳令が宣言されたのは45年ぶりだそう。
憲法(77条)によると「大統領は戦時・事変、またはそれに準じる国家緊急事態において軍事上の必要や公共の安寧秩序を維持する必要があるときには戒厳を宣布することができる」となっています。
戒厳令が発令されると言論、出版、集会、結社の自由、政府、裁判所の権限に対して「特別な措置を行うことが出来る」となっていて、軍部がとても強力な権限を有することになります。
ただし、国会議員の過半数の賛成で解除できます。議員は戒厳令下でも不当な拘禁は受けないことに(表向きは)なっています。
しかし昨晩は、武装した軍が国会に入り一部の野党議員の身柄を拘束しようとしたようです。
そもそものユンさんの戒厳令発令の動機が、過半数を握った野党が来年の予算案に合意せず、それどころか政権スタッフの弾劾を求める野党への対応に追われ「国政は麻痺状態にある。憲政の秩序を守るために非常戒厳を宣告する」というものです。
ある意味ではユンさんの非難は正しいと思います。予算案まで放棄するのはやり過ぎです。(最近の支持率が30%近くまで回復してきていたのは、こうした野党のお陰のはず)
ですが、戒厳令はとんでもない悪手でした。残念ながら軍部を投入しての「政治弾圧」「クーデター」と見られても仕方がありません。民主主義国家であるのなら、それこそ有権者にゆだねるべきことのはずです。
結局、相手方に大統領弾劾の口実を与えてしまいました。
ニューシースの記事からです。
野党、ユン弾劾案5日提出、早ければ6日採決...「否決されれば再推進」
(前略)
野党6党は4日午後2時40分頃、ユン大統領に対する弾劾訴追案を国会議案課に提出した。民主党のイ・ジェミョン代表を含む野党6党の議員191人全員が弾劾案発議に参加した。
野党は5日午前0時を過ぎ次第、弾劾案を本会議に報告し早ければ6日、遅くとも7日未明に弾劾案を表決処理する計画だ。弾劾案は発議後、初の本会議に報告が可能で報告時から24時間以後72時間以内に表決しなければならない。
民主党のキム・ヨンミン院内首席副代表は弾劾案提出後、記者団に対し「昨日今日あった違憲的で違法な戒厳とその過程であった内乱行為に対して、到底このまま見過ごすことはできない」とし「これ以上、民主主義が崩れることを放置できず、ひいては国民の生命と安全を守らなければならないという義務感で(弾劾案を)発議した」と明らかにした。
(中略)
野党は万が一、弾劾案が議決定足数を満たせず否決されても弾劾案を再発議する方針だ。キム院内首席副代表は「否決は考えていない」としつつも「もしもし否決になるならば当然再び発議することも考えている」と説明した。彼は「今は国家非常事態」として「国会ができる措置は全てしなければならないため、大統領弾劾を継続推進しなければならないと考える」と話した。
ユン大統領は前日夜10時24分頃、非常戒厳を宣言したが与野党議員190人は同日午前1時に本会議を開き、在席190人全員一致で非常戒厳解除要求決議案を議決した。ユン大統領は戒厳宣言から6時間後の午前4時25分頃、戒厳解除を宣言した。
(後略)
ニューシース「야, 윤 탄핵안 5일 보고·이르면 6일 표결…"부결되면 재추진"(종합)(野党、ユン弾劾案5日提出、早ければ6日採決...「否決されれば再推進」)」より一部抜粋
記事内のキム・ヨンミンさんの発言にもありますが、そもそも今回の戒厳令は、戒厳令発令の前提条件を満たしていなかったため「違法」との見方もあります。
戒厳令を宣言する際には、その理由・種類・施行日時・施行地域等を国会に通告しなければならないと定められているのですが、ユンさんは「生放送談話」という形で戒厳令を宣言しました。これが「通告」と見なせるのか意見が分かれているようです。
弾劾案が可決された場合、来年5月頃に大統領選挙となるのではないか?との報道も既に出ています。その場合、誰が出るにせよ国民の力の候補は厳しい戦いになることでしょう。