「ワクチンスワップ」の話

「ワクチンスワップ」という言葉をよく目にします。
既に6億人分のワクチンを確保していると言われる米国のワクチン余剰分を韓国に「都合」してもらって、数カ月後に韓国が十分にワクチンを確保できたらそれで返す、という韓国にだけすこぶる都合の良い話です。

外交部長官のチョン・ウィヨンさん発信です。「米国側と真剣に協議している」とし、特別大使のケリーさん訪韓時にも「集中的に議論した」そうです。
いつも思うんですけれど、公式発表で盛り込まれなかったことを後から出してくるのは何なんでしょうね?

で、「ワクチンスワップ」の件を米国務省の報道官に韓国メディアが尋ねたところ「米国内接種が最優先」と当然の返答だったそうです。


中央日報の記事からです。

韓米ワクチンスワップ尋ねると米国務省「国内ワクチン接種が最優先」


米国政府がコロナ19ワクチン確保のための韓米間の「ワクチンスワップ」協議と関連し、自国民のワクチン接種が先だという立場を示した。

ネッド・プライス米国務省報道官は21日(現地時間)、記者会見で「(韓米間の)ワクチンスワップが技術的に可能なのか、米政府は真剣にこれを考慮しているのか」という中央日報記者の質問に「私としては韓国や他の国との非公開外交対話について言及しない」としながらも「現段階で最優先すべきことは、国内ワクチン接種に集中すること」と答えた。

これに先立ち20日、チョン・ウィヨン外交部長官は来月下旬の韓米首脳会談を控え、ワクチンの支援をまず受け後日返済する「ワクチンスワップ」を米国と協議していることを明らかにしている。

プライス報道官はこの日「我々は米国人に対して特別な義務を負っている」とし「ワクチンに巨額の投資をしたのも、数億の安全かつ効果的なワクチンを米国人に出来るだけ早く提供するためだ」と述べた。

(中略)

ただ「米国は他の分野と同様に保険分野でもリーダー的役割があるということを知っている」とし「コバックス・ファシリティに20億ドルを寄付し、既にその役割を果たしている」と説明した。

(後略)

中央日報「한미 백신 스와프 묻자 美국무부 "국내 백신 접종이 최우선"(韓米ワクチンスワップ尋ねると米国務省「国内ワクチン接種が最優先」)」より一部抜粋


「他の国との非公開外交対話について言及しない」...公式に出た話ではない、と遠回しに牽制しているように思えます。
その上で「ワクチンが足りないならコバックスを使えばいいじゃない」と言っているわけですね、そのための枠組みですから。

ところで、米国はメキシコとカナダに対して韓国が言うところの「ワクチンスワップ」なる措置を行っています。
ただし、ここで提供されたのは既に確保済みだったアストロゼネカ製のワクチンです。米国はアストロゼネカ製の使用を承認していなかったので持っていても無駄だからです。

米国が自国民用に確保しているのは主にファイザーとモデルナ製のワクチンです。韓国が「融通してくれ」と言っているのはこのニ社製品なので意味が全く違ってきます。

果たしてそんな協議が本当に合ったのか...個人的に、韓国側から「協力要請」はあったのかもしれないけれど、米国側は返答しなかったのではないか、「協議」と呼べるほど具体的な話では無かったのではないか、そんな気がしています。
というか、散々っぱら「ワクチンは確保できている」と言っていたのは何だったのでしょう?