釜山エキスポ招致失敗...戦略ミスを招いたのは「私たちだけが悲観的な報告をするのは容易ではない」と楽観的報告に偏ったからという話

釜山のエキスポ誘致失敗がまだちょくちょく記事になっています。そんなに擦るようなネタか?と思うのですけど、一部で政治批判に利用されているせいなのかもしれません。

落選後にユンさんは記者会見で釜山支持を訴えた相手国のホンネを「読み違った」としていました。
昨日も少し触れましたが、韓国は2次投票にオールインしていました。そして1次投票では「少なくとも60ヵ国」が韓国を支持し、ローマがふるい落とされて2次でサウジと韓国の一騎打ちになると読んでいました。
この読み違いの背景に「客観的報告がなされていなかった」との指摘が出ています。韓国への支持が十分集まっていない、との報告をげると「なぜ士気を挫くような報告を上げるのか」との反応があったというのです。

 



朝鮮日報の記事からです。

「EXPOオールイン」の雰囲気に...政府も企業も客観的に見ることができず


(前略)

エキスポ開催地を予備選挙で決め始めた1990年以来、3都市以上が挑戦したが1回目の投票だけで開催地が確定したのは今回が初めてだ。サウジは投票参加国165ヵ国のうち119ヵ国(72.1%)の支持を得て直ちに誘致を確定した。120ヵ国余りの支持を確保したというサウジの公言と外信の報道にほぼ合致する結果だった。

(中略)

29日の本誌取材を総合すると、投票日直前まで政府内では1回目の投票で70程度を得ることが出来るという報告が上がった。韓国が1回目の投票で落ちると見た人は誰も居なかったという。政府高官は「サウジが有利だということは分かっていたが、これほど圧倒的だとは予想できなかった」と話した。

その結果、政府と財界は2次投票で1、2票差で勝負が決まると見て、サウジに投票するとすでに約束した国家を中心に「2次では韓国に投票する」という約束を取り付けることに集中したと知られた。状況を誤信した結果、誤ったアプローチを用いるようになったのだ。

政府が最初から釜山の誘致可能性が高いと誤判したわけではない。昨年7月、招致委員会を官民合同で改編し政府が招致合戦に加わった時は政府はサウジの誘致可能性が高いと見ていた。今年初めまで政府の立場は「誘致の可能性が低いということは知っているが、だからといってあきらめたような姿を見せることはできない。最後まで最善を尽くす姿を見せなければならない」ということだった。

しかしユン大統領とハン首相をはじめとする政府最高位の関係者らが国際博覧会機構(BIE)加盟国182ヵ国の首脳の大多数に会うほど招致合戦に集中し、むしろ希望的思考が冷静な現実認識に取って代わられた。開催地決定の数ヶ月を控えて一部の人々は「超近接」「逆転」などを口にした。これに対し誘致交渉の一線から「まだ韓国が確保した票がはるかに不足している」という保守的な報告が上がったが、政府高位層では「なぜ士気をくじく報告を上げるのか」という叱責性反応が出てきたと知られた。

このような雰囲気の中で民間誘致委も楽観的すぎる見通しを示し、状況を誤認した。財界によると、民間誘致委は1次投票でサウジと韓国がそれぞれ90票、70票程度を得ると予想し、イタリア支持10票余り、浮動票10票余りが2次投票で相当部分韓国に来ると期待した。しかしサウジは1次投票で勝負を決めるという戦略を打ち出した。財界高位関係者は「サウジが会員国に『2次は釜山をとっても構わないので、1次では無条件に私たちをとってほしい』と各種物量攻勢をした」と話した。

一部の企業と主要誘致委員が実績競争を繰り広げ自分が担当する国家の立場をやや楽観的に報告し、韓国側の支持票が膨らんだ側面があるという分析も出ている。ある財界関係者は「民官が一丸となってエキスポに全力投球する状況で、私たちだけが悲観的な報告をするのは容易ではなく、罪のない国々が私たちの票だと報告した側面がある」と話した。



朝鮮日報「‘엑스포 올인’ 분위기에… 정부도 기업도 객관적 보고 못해 오판(「EXPOオールイン」の雰囲気に...政府も企業も客観的に見ることができず)」より一部抜粋

最後の「罪のない国々が私たちの票」のところですけど、「罪のない(애매한)」は「無実の」「曖昧な」などの意味があります。
ここでは「韓国支持」と報告された国々の中には、はっきりとそう示したわけでは無く、「曖昧な」立場だったのに勝手に「韓国支持」にされた「罪の無い」国々があったという意味になります。


希望的観測が冷静な現実認識に取って代わる様子って、韓国メディアによく見る姿な気もします。希望的観測と憶測だけで都合の良いことを並べ立てた記事を書いて、それがいつの間にか「そうに違いない」になって「そうだ(事実誤認)」になって「そうだったのに(裏切られた/邪魔された)」になっていくパターン、凄くよく見ます。

今回のをパターンに落とし込んでみると...昨日の記事で紹介しましたけれど、去年12月の時点で韓国を支持していた国は17ヵ国、今年11月には44ヵ国になっています。同じくサウジアラビアは45ヵ国から11月には84ヵ国です。
韓国の支持は確かに伸びています。でもサウジの支持はもっと伸びています。差は埋まってないどころか、逆に開いています(韓国+29、サウジ+39)。
なのに、この状況で「逆転(できるかも)」「超接戦(かも)」などと楽観的に言い始め、いつの間にか「韓国支持60~70は堅い(に違いない)」になり、「2次投票で逆転可能(事実誤認)」に発展。誤認したまま「2次投票オールイン」という間違った戦略を立て、そして投票で大敗すると「オイルマネー(に邪魔された)」...すごく単純化してみましたけど、こう見るとヤバイ思考ですよね。