韓国の不動産PF(プロジェクト・ファイナンス)は、自己資本比率3%、残りの97%は借金というトンデモ錬金術で回っていました。日本を含め諸外国はおよそ30%~40%の自己資本が投入されているとのことで、こんな国は「世界で唯一」だとか。(参考)
不動産PFを軟着陸させようと四苦八苦している韓国金融当局ですから、大本の原因をそのままにはしておけません。経済関連の関係長官が集まる会議で「不動産PF制度改善法案」が出されたそうです。その中で自己資本比率を「先進国水準(20%)」に引き上げるとしています。
朝鮮日報の記事からです。
不動産PF「雷管手術」...施工会社の自己資本比率を高める
(前略)
政府は13日、経済関係長官会議で「不動産PF制度改善方案」を発表し2028年までに不動産開発事業の自己資本比率を20%水準まで高めると明らかにした。国内不動産PFの最も大きな問題に挙げられる零細施行社の低い自己資本比率(現行2~3%)を先進国水準に引き上げ、事業初期段階から高金利貸出(ブリッジローン)に依存する問題点を改善するということだ。地主が土地を現物で出資し、PF事業に参加するよう誘導し、施工会社の自己資本を拡充する計画だ。
しかし、政府改善案は全面的に土地所有者の事業参加可否に成否がかかっており、零細な施行会社が財務的投資家を探しにくい構造的な問題点は以前と変わったことがないという指摘が出ている。
(中略)
不動産PFはマンション建設を含めた不動産開発事業の際、未来分譲収益などを担保に資金を調達するもので昨年末基準で230兆ウォン規模に達する。米国・日本のような先進国では施行社であるデベロッパーが金融会社や年金基金などの投資を誘致し、全体事業費の30%程度の自己資本で土地を買い入れ事業を始める。しかし我が国では施行会社が総事業費の2~3%だけを投入し残りは全面的に貸出に依存する。
(中略)
同日の政府改善案は土地所有者が土地を出資し、事業の株主として参加する方式で自己資本を高めるというものだ。地主には事業竣工後、収益が出るまで土地出資に対する税金納付を猶予することにした。国土部関係者は「高いブリッジローン利子を払わなくても済むので事業費を節約でき、分譲価格下落効果も期待できる」と話した。政府はまた、自己資本比率が高い施行会社はPF貸出を簡単に受けられるよう銀行・保険会社・証券会社などの貸倒引当金積み立て方式も変えることにした。
(中略)
政府は「銀行と保険会社が長期賃貸住宅事業に投資できるよう許容する」としたが、年金基金など財務的投資家をPF事業に誘引できる方案はなかった。米国の場合、施行会社が自己資本の大部分を保険会社と年金基金、銀行の一種である連邦貯蓄組合の投資で調達する。日本もやはり大型銀行がリート(不動産投資会社)形態で持分投資に参加する場合が多い。大韓建設政策研究院のイ・ウンヒョン研究委員は「国内金融会社と年金基金は『安定性』と『長期収益性』を最優先に問い詰めるが、『高危険、高収益』構造である不動産開発のリスクを敬遠し投資を敬遠している」と話した。
朝鮮日報「부동산PF ‘뇌관 수술’… 시행사 자기자본비율 높인다(不動産PF「雷管手術」... 施工会社の自己資本比率を高める)」より一部抜粋
例えば、自分が所有している土地にマンションを建てる計画が不動産開発企業から持ち込まれ、「売ってくれないか」なら分かります。
今、上がっている改善案ではその事業計画に「土地出資者」として「参加してくれないか」になるわけです。土地所有者に土地を「出資」させれば、土地取得代をローンで賄わなくて済むから、という理由で。
ちょっと意味分からないですよね。いやいや、土地は売るんで、後は勝手にやってくださいって話です。万が一、計画が途中で頓挫したり、予定通りに分乗益が出なかったら土地所有者が一番困る可能性高いです。なにより、その事業の有効性を土地所有者が自己判断しなくてはいけなくなります。
「自己資本比率を高めるには貸出依存を減らすべし」と、そのためだけに土地所有者にもリスクを取らせようというのなら、バカげた話です。
しかもこの案、どうも強制ではないようです。土地所有者が土地を出資すれば税金納付時期を遅らせられるというインセンティブがあるだけのようですね。意味ないです。
しかし、じゃあ強制にすればどうなるのかというと、土地出資を断られたら土地を買い取るしか無いので今と変わりません。自己資本比率を20%↑を法規制してしまうと、恐らく韓国の建設業にトドメを刺してしまいます。
結局、「何もしてない」し「何もできない」し「何もしない」のを「何かしてる」ように見せているだけです。